エッセイ
子どもが生まれてから、「ふらっとカフェに行く」ということが、とても遠い出来事になりました。 行けないわけではないけれど、行こうと思うまでに、準備と覚悟が必要になります。 授乳のタイミング、お昼寝の時間、機嫌、天気、荷物。 そうして考えているう…
その名前を、どうしても最後まで言いたいらしい。途中までは合っているのに、後半になると音が絡まって、少しだけ別の言葉になってしまう。 それでも本人は、一生懸命に、胸を張って言う。「ねえ、ここ、いく?」と、指差しながら。 その姿を見たとき、私は…
押し入れの奥から、去年の秋服を出した。少しだけホコリっぽい空気と一緒に、懐かしい香りがふわりと立ちのぼる。柔軟剤の匂い、赤ちゃんのころに使っていたベビーソープの匂い、どれも遠くの季節を思い出させる。 小さなカーディガン。袖口がすり切れかけた…
夕方のキッチン。赤ちゃんの泣き声が響き、私は抱っこひもを急いで肩にかける。その横で、長女が静かに見ている。「まってるね」――その一言に、胸の奥がじんと熱くなった。 1. “待たせてしまう”からはじまる 2. 小さな変化に気づくとき 3. 言葉を変えた日 4.…
最近、抱っこがずっしり重くなった。 2歳半を過ぎた長女は「だっこー」と言って、両手を伸ばしてくる。 0歳の次女はまだ軽いけれど、1日に何度も抱き上げるから、腕の中はいつも温かい。 抱っこは、愛しさと疲れの入り混じった行為だと思う。 買い物袋を片手…
ここしばらく、なんだか毎日が慌ただしかった。 資格試験の勉強、子どもの風邪で通院、夫の出張。 どれも避けられないことで、誰かのため、自分のために動いていたはずなのに、気づけば一日があっという間に終わっていた。 静かな夜の光が、心の隙間を照らし…
たまに。 変化のないことが、怖くなることがあります。 けれど一方で、 変化のないこともまた、 素晴らしいことなんではないか、ということについて。 たとえば。 体温のあたたかさ。 胸の奥に確かに感じる、ちいさな鼓動。 休みなく、変わりなく、 心臓が鳴…