ソムリエ主婦🥂育児のぼやき

長女2歳&次女0歳、ソムリエ資格をもつ29歳専業主婦の日々。ワインを飲むひとときのように、肩の力をぬいてホッとする時間を大切にしたい。

【書評】原田マハ『ハグとナガラ』──介護と子育て、そして旅の意味【読書を綴るエプロンノート】

 

 

はじめに

2020年、世界がコロナ禍で揺れていた時期に刊行された原田マハさんの小説『ハグとナガラ』。

旅に出ることさえままならない時代にあえて「旅」を描いたこの作品は、ただの旅行記ではなく、「人生における旅の意味」や「友情のかたち」を深く問いかける物語です。

私自身、2人の子を育てながら、しばらく旅から遠ざかっていました。

20代の頃は「思い立ったらすぐ行く」衝動の旅ばかりでしたが、30歳を目前にした今は、旅の意味や重みが変わってきているのを実感しています。

そんな私が『ハグとナガラ』を読んで感じたことを、子育て世代の目線から綴ってみたいと思います。

 

カフェにて、一人時間のときに読みました☕️

あらすじの概要

主人公は55歳の独身女性・ハグ。

大手企業でキャリアを積みながら、老いた母の介護にも向き合っています。

そんな彼女と、同じように人生に葛藤を抱える友人・ナガラ。

二人は一緒に旅を重ねていきます。


訪れる土地のひとつが秋田県白神山地、そして男鹿市。

紅葉の森、冷たい潮風が吹く海辺、古い旅館の木の匂い…。

原田マハさんならではの筆致で、土地の空気が鮮やかに描き出されています。

しかし二人の旅はいつも順調というわけではありません。

親の介護のために予定通り出られないこともある。

それでも「また旅に行こう」と声を掛け合う。

そこには、この年代ならではの「人生の重さを抱えた友情」が静かに流れています。

土地の空気感を鮮やかに感じられる

旅が恋しくなった

コロナ禍の背景を思い出しながら読むと、旅の描写は一層胸に迫ります。

秋田県をはじめ、各地の情景は本を開くだけで旅の空気を吸い込むよう。


子育て中の私は、自由に旅へ出ることは難しい。

けれどページをめくりながら「また旅がしたい」と素直に思えました。

20代の頃の旅は、行き当たりばったりで無計画でも楽しかった。

けれど30歳を目前にした今は、旅は「誰と」「どんな時間を過ごすか」に重きが移っています。

旅の価値観は、年齢やライフステージによって確実に変わるのだと改めて感じました。

主人公との違いと憧れ

ハグは独身で、都会で仕事に打ち込みながら介護を背負う女性。

私は結婚し、子育てに追われる日々。立場も状況もまったく違います。

それでも、彼女の強さや生き方に憧れを覚えました。

一人で人生を切り開き、自分の足で立ち続ける姿。

私には選ばなかった人生のかたちだからこそ、強く心を惹かれました。

同時に、「違う人生だからこそ、私の歩みもまた意味を持つ」と思わせてもくれました。

人と比べるのではなく、それぞれの生き方に価値があるのだと気づけるのも、この物語の力です。

友情のかたち

若い頃の友情は「一緒に遊ぶ」「語り合う」ことが中心でした。

しかしハグとナガラの友情は、介護や仕事といった現実の重荷を互いに理解したうえで、それでも「一緒に旅を続けたい」と思い合うところにあります。

介護や家庭の事情で旅が叶わないこともある。

だからこそ、実際に一緒に旅できる時間が何倍も大切に感じられる。

その不完全さを含めて「友情の深さ」が表れているのだと思いました。

介護と子育ての共通点

読んでいて、介護と子育ての共通点にも自然と意識が向きました。

一見まったく違うものに見えて、実は「誰かの生活を支えるために、自分の時間や体力を差し出す」という構造は同じです。

夜泣きで眠れない子どもと、夜中に呼ばれる親。

思い通りに進まない毎日。

自分のペースで動けないもどかしさと、それでも必要とされる喜び。

今は子どもを育てていますが、将来、私自身が介護に向き合う日も来るでしょう。

そのとき私はどう振る舞えるのか。

子育ての日々は、もしかすると介護と向き合うための予行演習でもあるのかもしれません。

この気づきは、物語を通じてハグやナガラの視点を追ったからこそ得られたものでした。

旅館の描写に癒やされる

作中の旅館や自然の描写は、子育てで遠出できない今の私にとって「本の中での小旅行」でした。

木造建築に漂う匂い、露天風呂の湯気、紅葉の色、地元の人の言葉。

ページをめくるだけで自分の生活から少し離れ、旅をしている気分になれる。

これは子育て世代にとって何より贅沢なことかもしれません。

子育て世代だからこそ響いたこと

『ハグとナガラ』を読んで強く感じたのは、「旅の意味は年齢や状況によって変わる」ということです。

 

20代は衝動と自由の旅。
30代目前の今は、家族や子どもと一緒に「誰と行くか」が中心。
そして50代以降は、介護や健康と向き合いながら、それでも「旅を続けたい」と願う。


旅はただの移動ではなく、その時々の自分を映す鏡のようなもの。

子育て世代の私にとっては、遠くに行けなくても「近所のカフェで一息つく時間」が小さな旅に近いものになっています。

旅の意味は年齢や状況によって変わる

まとめ

原田マハ『ハグとナガラ』は、女性二人の旅を通して「人生の重み」「友情の深さ」「旅の意味の変化」を描いた小説です。

  • 旅先の描写がとにかく鮮やかで、読者を現地に連れていく
  • 介護や仕事の葛藤は、この年代ならではのリアルさを持つ
  • 女性同士の友情は、難しさを抱えながらも「それでも一緒に」という力強さで描かれる
  • 子育て世代にとっても「旅の意味が変わる瞬間」を感じさせてくれる

介護も子育ても「誰かを支える時間」という共通点を持っています。

その大変さと同時に、誰かに必要とされることの尊さも教えてくれる。

この物語を読み終えて思ったのは、旅は距離や豪華さではなく「心のあり方」で決まるということ。

そして「いつかまた旅に出るとき、誰と一緒に過ごしたいか」を考えるきっかけになる一冊でした。

 

最後までお読みいただき、ありがとうございました😊